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大人のための小さな童話
〜パパはなんでも知っている〜
12月5日
もうじきクリスマスがやってくる。
森のそばにたたずむ可愛らしいこの家にも、大きなクリスマスツリーが飾られた。
このツリーは去年、買い換えたものだ。
娘のクミが大きくなったのに合わせて、ツリーもそれまでよりちょっと大きいものをふんぱつしたのだ。
クミの母親であるナツミは、ダンナのマサトシに、「ね、今年のプレゼントは何がいいかしら・・・?」なんて聞きはじめた。 聞いておきながら、結局は自分で、「やっぱりグレちゃんのお洋服がいいかしらね〜 着せ替え遊びができるように」なんて勝手に解決してしまったりして。
しかし、とここでマサトシは思う。
思うが、彼は決してそれを口にしない。
してはいけない。そんな気がする。
(ナツミ、お前は去年、「私、手作りのプレゼントは今年限りにする」なんて言ってなかったか? 熊のぬいぐるみがあまりに・・・いや、ちょっとブサイクに仕上がってしまったんで、こんなプレゼントじゃクミに悪いわと。俺は気持ちが伝われば十分だと言ったし、それが本音ではあるけれど。 それと・・・・・・・ これが一番大事なことなのだが、なぜあの熊のぬいぐるみは、一夜にしてあんな小さくなってしまったのだ???)
12月12日
ここの所、娘と妻がそわそわしはじめた。
天真爛漫な似た者親子のこの二人は、以外にしっかりした面も芯の強い面もある
のだけれど、時に突っ走りかねない危うさがあるので、それが周囲の人々に対し
(守ってあげなければ)という気を起こさせるらしい。
もちろんマサトシはその筆頭だ。
(何に対しそわそわしているの?)
二人に聞いてみたい。
しかし、やはりまた(聞いてはいけない)
そんな気がしてしまう。
でもね、パパはこれだけはわかるんだよ。
ママと娘の間には二人だけの秘密がある。
そして、二人は ' パパはそれには気付いていない ' と思っている。
いや、実際詳内容はしらないけどさ。
二人は、パパは「隠し事がある」という事実にすら気付いていないと思っているみ
たいだから。
だから、俺は何も知らないふりを続けるしかない。
愛する妻と、可愛い娘、仲良く暮らしていけるだけで幸せだから。
昨夜、グレ・・・とかいう熊のお洋服を仕立てて寝不足気味、それこそ「目の下に
くま」の妻を見つめ思う。
(キーワードは聖夜、か・・・・・・・)
娘がピアノで、クリスマスソングを弾き始めた。
俺は、娘のほうを振り返り、そっと話しかける。
「クミ、○○デパートに、まこもレンジャーのショー観にいこうか」
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