ゲームの作り方 シナリオ編



RPGのシナリオを書く

 それでは、実際にRPGのシナリオを書くことを想定して、シナリオの書き方を説明していきます。(グループで作ることを前提としていますが、一人で作る場合も共通する部分はたくさんあると思います)


テーマを決める

 テーマとは、主題のことです。物語の中で、主に表現したいことをテーマと言います。
 テーマというと、「恋愛」とか「戦争」とか「友情」といった一言だけの単語のテーマを思い浮かべるかもしれません。確かにそれもテーマですが、実際に物語を書く場合、単語だけでは大雑把すぎますので、もう少し詳しく具体的なテーマを決めましょう。
 例えば、「冒険」をテーマにするなら、もう少し詳しく「世界を滅ぼそうとする魔王を、大冒険の末、勇者が倒すお話」くらいには、具体的に決めると良いと思います。
 これがもし「恋愛」をテーマにするなら、「好きでもない王子の元へ嫁いだお姫様が、だんだん王子に心を開いていくお話」みたいな感じです。

 シナリオを書いていると、つい横道にそれたり、当初の目標を忘れてしまいがちなので、最初にテーマを決めてから、シナリオを書き始めましょう。


よくあるテーマ

 では、ゲームでよく見られる物語のテーマには、どんなものがあるでしょうか。考えてみましょう。


◆冒険
 RPGには冒険は付き物です。そのため、わざわざ冒険をテーマにするというのも当たり前すぎて変な感じかもしれませんが、これも立派なテーマのひとつです。
 ただ、「冒険する」だけでは、大雑把過ぎますので、実際にテーマを決めるときには、もう少し具体的に決めたほうがいいですね。例えば「考古学者がジャングルの奥地の遺跡を探検する物語」とか「魔法の指輪を手に入れた青年が、指輪を狙う悪党に追いかけられる物語」とかです。



◆勧善懲悪
 勧善懲悪とは、読んで字のごとく「善を勧め、悪を懲らしめる」ことです。ようするに、正義の味方が悪者を倒す、というパターンです。
 RPGでは、このタイプが実に多く、使い古されている感があります。あえてテーマとして取り上げるのが、はばかられるくらいです。
 しかし、「正義は勝つ」というのは、単純ですが気持ちいいもので、多くのストーリーの中に流れている普遍的なテーマでもあります。
 特にRPGの場合、冒険の要素が入ってくることが多いため、冒険の動機付けとして悪者が登場します。そのため、勧善懲悪のストーリーになりやすいと言えます。
 勧善懲悪の代表的なテーマは「世界を滅ぼそうとする悪者を勇者が倒すお話」ですね。RPGの典型的なシナリオです。
 その他にも、「刑事が殺人犯を追い詰めて捕まえる」とか「悪い大臣に国を追われた王子が国を取り戻す」とかも勧善懲悪と言えるでしょう。


 
◆主人公の成長
 主人公の成長も、よく選ばれるテーマです。
 プレイヤーは、主人公に感情移入しやすいので、主人公の成長を描いた作品は、受け入れられやすいでしょう。

 主人公の成長というテーマには、多くの場合、主人公を成長させるための別のテーマが組み合わされます。
 例えば、冒険や勧善懲悪です。世界を支配しようとする悪者との戦いを通じて主人公の成長を描く、というようなものですね。

 また、RPGには、成長システムがありますので、シナリオのテーマとして選びやすいと言えるでしょう。
 成長システムは、ほとんど肉体的な成長を表しますので、シナリオでは精神的な成長を描けると良いでしょう。
 あるいは、肉体的な成長を印象付けるシナリオを書くということも考えられます。例えば、最初の頃勝てなかった相手に、成長してから勝てるようになるというようなものは、その典型です。



◆恋愛
 恋愛は、ゲームでも良く使われるテーマですが、どちらかというと恋愛シミュレーションゲームやアドベンチャーゲームに多いですね。
 RPGは、まず冒険という感じで、恋愛がメインテーマになることは、あまり無いように思います。
 しかし、サブテーマとしてはもってこいです。冒険ものだと言ってもずっと冒険しっぱなしでは、疲れてしまいます。メリハリをつけるためにも、落ち着ける場面は必要です。
 また、キャラクターの人間性を出すのに、恋愛というテーマは有効に働きます。
 アクション映画などでも、よくヒーローとヒロインの恋愛が描かれます。これも、メリハリをつけたり、キャラクターを生かすための手法と言えるでしょう。



◆復讐
 復讐も、結構採用されるテーマです。
 重く、そして暗くなりやすいので、あまり安易には使えませんが、うまく書けば強い印象を残すテーマです。
 復讐は、その性質上、ホラーやサスペンスで採用されやすいテーマですが、他のテーマとも共存できます。
 例えば冒険ものでも、主人公キャラの中に家族を敵に殺された者が居て復讐を願っているとか、あるいは恋愛ものでも、ある男に復讐しようとしてその娘に近づき、付き合っているうちに本気で愛してしまうとか、色々考えられます。



◆社会問題
 差別・環境破壊・戦争など、社会的な問題をテーマにすることもあります。
 テーマというと、こういうちょっと重々しいものを想像する人が多いかもしれません。
 これらのテーマは、少々扱いが難しいですが、うまく消化できれば人の心に残る重厚な物語が書けるでしょう。
 

テーマの選び方

 テーマは、どのようにして選ぶべきでしょうか? ちょっと考えてみましょう。


◆ゲームのコンセプトに合わせる
 ゲームシナリオの場合、当然ゲームのコンセプトに合わせて決めなければなりません。
 ゲームのコンセプトがホラーなのに、シナリオのコンセプトが勧善懲悪では、ちぐはぐになってしまいます。(それでも成立させられないことは無いですが)
 基本的には、ゲームのコンセプトに沿って決めることになると思います。もちろん、企画担当者がシナリオのテーマも具体的に決めてしまう場合もあるでしょう。


◆書きたい事をテーマに選ぶ
 やはり、シナリオライター本人が書きたい事を書くのが一番です。好きこそ物の上手なれと言うとおり、好きなものの方が集中して書けますし、書いていて楽しいでしょう。
 ただし、これも許される範囲でということになります。先に述べたように、ゲームのコンセプトや企画担当者の方針で、シナリオライターの自由は制限されます。


◆書ける事をテーマに選ぶ
 シナリオの仕事は、選ぶテーマによって難易度が変わります。社会問題などをテーマにすれば、やはり複雑になったり難しくなったりすることが予想されます。
 また、シナリオライターの得手不得手もあります。例えば、冒険ものは得意だが、恋愛ものは苦手だという人もいるでしょう。
 難しいことにチャレンジしていくことも大事ですが、それはある程度経験を積んでからでよいと思います。
 最初のうちは、あまり難しいことには手を出さず、自分に出来る範囲でテーマを選んだ方がいいでしょう。
 テーマは簡単でいいのです。無理に複雑なことをしようとする必要はありません。複雑なテーマを選んだからと言って、物語が面白くなるわけではないのですから。


テーマ決定のヒント


◆テーマの決め方
 具体的に、テーマを決めるための技法を紹介します。
 技法と言っても、そう大げさなものではありません。設定項目を決めて、設定していけばいいだけです。

 設定項目を考えてみました。

・世界(どんな世界か、いつの時代か)
・主人公(どんな主人公なのか)
・目的(主人公の動機、目的は何か)
・行動(主人公が何をするのか)
・感じてもらいたいこと(プレイヤーに何を感じてもらいたいか)


具体例を書いてみます。
例えば、よくある魔王討伐ものなら、


・世界→ファンタジー世界で
・主人公→英雄の血を引く少年が
・目的→世界の平和を取り戻すために
・行動→魔王を打ち倒す
・感じてもらいたいこと→悪者を打ち倒す爽快感

というような感じになります。
これは、典型的な勧善懲悪のテーマですね。

これでは、平凡すぎると感じた場合は、少し変更してみましょう。
例えば、

・世界→ファンタジー世界で
・主人公→とある村の青年が
・目的→殺された親友の敵を討つために
・行動→魔物と戦う
・感じてもらいたいこと→悪者を打ち倒す爽快感

 こうなると、勧善懲悪でもありますが、復讐の要素も入ってきます。少し複雑になりますが、その分リアリティがあります。
 そもそも、少年が魔王を倒すというのは、常識的に考えればありえない話です。それよりも、村の近くに現れた魔物を倒すくらいのほうが、リアリティがありますね。


◆想像力を刺激しないテーマはダメ
 テーマを作ったら、もう少し詳しい状況を考えてみましょう。
 例えば、上記の例なら「親友はどうして殺されたのか?」「なぜ魔物が現れたのか?」「青年はどんな仕事をしているのか?」といったことを考えていくうちに、話が膨らんでこないといけません。
 テーマはただ決めるだけでなく、話を膨らませる「とっかかり」にならないと駄目なのです。
 テーマを決めた時、具体的なことが何も浮かんでこないなら、そのテーマは駄目なテーマです。ボツにするか、手を加えましょう。
 決して、話が膨らまないようなテーマのまま、シナリオ製作を初めてはいけません。後で困ったことになりますし、大抵の場合、あまり面白いシナリオにはなりません。


◆抽象的なテーマはダメ
 テーマは、具体的に決めた方が良いです。例えば、「戦争の愚かさを描く」というテーマに決めたとします。立派なテーマに見えますが、誰が何をする物語なのか、まったく見えてきません。
 物語は、主人公を通して表現されます。ですから、主人公が「どう行動し」「どう考えるか」ということを見て、プレイヤーは、色んなことを感じるわけです。
 ですから、戦争の愚かさを描きたいなら、主人公のどういう行動を通じて、それをプレイヤーに感じてもらうのか、具体的に決めた方が良いのです。


◆サブテーマを決める
 メインテーマだけでは、単純すぎるとか、いまひとつ膨らまないという時は、サブテーマを付け足してもいいかもしれません。
 例えば、先の魔王討伐ものの例では、メインテーマの部分は、「英雄の血を引く少年が、世界の平和を取り戻すために、魔王を打ち倒す」です。
 これに、サブテーマとして「孤独で人を信用しなかった少年が、仲間と旅をするうちに、心を開き友情を育んでいく」というものを加えてみます。
 単に英雄の血を引くから魔王を倒すというより、人間性が出てこの方がいいでしょう。話も膨らみそうです。例えば、最初は一人で魔王退治をしようとしていたが、王様が騎士をお供につける。その騎士と最初は反発しているが、やがて互いに信頼するようになる、と言った具合です。
 また、なぜ孤独に生きてきたか、英雄とはどんな人物なのか、など考えていくと、話が膨らみそうです。


短編のテーマを決める
 あなたが初心者なら、最初に作るゲームは短編が良いです。長編になると、作業量も多くなりますし、全体を把握しにくくなります。また、他のパートの作業も大変になり、ゲームが完成する確率が下がります。ですから、最初はまず短編作品に挑戦したほうがいいのです。(もちろん、企画担当者がどう考えるかにもよりますが)

 しかし、短編のテーマを決めるのは、意外と難しいものです。短編が難しいのは、例えば以下のような理由からです。

◇短いストーリーではまとめきれない
 表現したいことを書こう思うと、やはりある程度の文章量は必要になります。長編なら時間をかけてゆっくり説明し、表現することが出来ますが、短編は短くまとめなければなりません。これが難しいわけです。

◇スケールが小さくなりがち
 スケールの大きな話は、なんだかそれだけで面白そうです。しかし、スケールの大きな話を短くまとめるのは困難です。したがって、短編はどうしてもスケールが小さくなりがちで、心躍らせるようなテーマをみつけにくいのです。

◇RPGのシステムとの兼ね合い
 RPGは、元々成長の要素が入っているため、主人公が成長するのにある程度の時間が必要です。30時間の長編なら、30時間かけて成長するので、強大な敵を倒すまでに成長しても不自然ではありません。
 しかし、1時間の短編には、成長する時間が1時間しかありません。いえ、実際には、導入やクライマックス、エンディングには、基本的に主人公は成長しませんから、成長のための時間は30分も無いかもしれません。
 つまり、オーソドックスなRPGは、元々長編向きで、短編には向かないということです。


 では、どうやったら、良い短編のテーマを決められるでしょうか。ちょっと、考えてみたいと思います。

○目標をを小さくする
 オーソドックスなRPGに、「勇者が、魔王を退治する」というものがあります。このテーマは長編向きです。なにせ相手が魔王ですし、世界を舞台にした戦いになりますので、まともにやったらどうやっても短編にはなりません。
 そこで、目標をもっと小さくしてみましょう。例えば、「畑を荒らすイノシシを退治する」これなら、短編向きです。いくらなんでもショボすぎるというなら、「村人を苦しめる盗賊を退治する」でもいいかもしれません。

 目標を小さくすれば、とりあえず短編向きにはなりますが、それと同時にストーリーの魅力が減ってしまうことも考えられます。例えば、「勇者が、イノシシを退治する」では、話が小さすぎて盛り上がりません。(逆のその滑稽さをギャグにしてしまえば面白くなりそうですが)
 話が小さくてつまらなくなるのを防ぐためには、主人公もスケールダウンしましょう。例えば、「勇者が、空き巣を捕まえる」だと、主人公に対して目標が小さすぎて盛り上がりません。しかし、「保安官が、空き巣を捕まえる」なら、ある程度釣り合いが取れます。
 これが、「主婦が、空き巣を捕まえる」なら、主人公にとって結構大きい目標になるので、もっと話が盛り上がりやすくなります。「子供が、空き巣を捕まえる」だと、もっと大きい目標になります。
 物語は主人公の目を通して語られますから、主人公をスケールダウンしてしまえば、周りの世界は相対的に大きく見えます。

 
○期間を限定する
 スケールの大きな話でも、期間を限定すれば短編になります。「勇者が、魔王を退治する」というお話でも、その一部、例えば「魔王を退治しようと決意する、きっかけになった出来事」とか、あるいは「まさに、これから魔王との決戦を迎える」という時点から描き始めるなどすれば、短編になります。
 もちろん、他のテーマでも期間を限定すれば、短編にしやすくなります。「彗星が衝突して、世界が滅ぶまでの3日間を描く」とか、「仕事一筋に生きてきた男が3年ぶりにとった休暇を描く」とかいった具合に、短い期間のお話にします。


○空間を限定する
 空間を限定することでも、短編に向いた話にできます。特にRPGの場合、空間が限定されると、必要なマップやBGMなども減って、作るのが楽になります。
 「洞窟に閉じ込められて脱出する物語」とか「子供たちが、肝試しで荒れ果てた古城を探検する物語」とか、色々考えられます。


○キャラ中心でいく
 短編では、ストーリーを十分に描く余裕がありません。それなら、いっそストーリーを描くことはあきらめ、キャラクター中心でいくというのも、ひとつの手です。
 主人公の個性が出るような、ちょっとしたエピソードを考え、そのエピソードを通じて、主人公の魅力を表現できればいいと考えれば、比較的楽にシナリオが書けると思います。


基本設定を決める

 テーマが決まったら、基本設定を決めます。
 基本設定は、テーマの設定項目をより細かくして設定していけばいいでしょう。
 どの程度まで細かいことを設定するかは、シナリオ次第、テーマ次第ですが、最初から細かいことまで決めてしまっても窮屈になるので、最初は大まかに決めればいいと思います。
 シナリオ製作の作業を進めながら、それに合わせて設定を詰めていきましょう。

 基本設定を決める上で重要なのは、テーマを実現するのにふさわしい設定を作るということです。
 もちろん、ゲームの設定としてすでに決まっていることもあるでしょうから、そのあたりも考慮に入れて、出来る範囲で決めていくことになります。


世界設定

 世界設定では、下記のようなことを設定すると良いでしょう。(すべてを設定する必要は無いです。大体状況が把握できる程度に決めておきましょう)


◆世界観
 世界観がイメージしやすいように決めておくと良いでしょう。
 例えば、「魔法やモンスターが居るファンタジー世界」という感じです。


◆時代
 時代とは、中世とか、現代とか、近未来といったものです。
 架空の世界を舞台にする場合、必ずしも単純な時代設定が有効なわけではありませんが、雰囲気をつかむために、時代設定をしておいた方がいいでしょう。
 

◆場所
 物語の舞台となる場所の設定、地理的な設定です。
 例えば、何という国を舞台にする、といったことです。ひとつの町だけを舞台にするなら、町だけの設定でもかまわないでしょう。


◆政治
 主に主人公が属する国の政治です。
 君主制とか、議会制といったことです。政治制度によってシナリオが影響を受ける場合は、決めておいた方がいいでしょう。


◆産業
 漁業が盛んとか、工業が盛んというような設定です。
 これによって、マップや登場人物が変わってきます。


◆文化
 文化について、特に書くことがあれば、書いておきます。


◆宗教
 宗教について書きます。神が存在するかどうか、世界にどんな影響を与えているのかなども書いておくと良いでしょう。
 ファンタジーRPGの場合、主人公キャラに僧侶が登場することも多いのですし、回復やセーブの場所として教会が出てきたりもします。そういう意味でも宗教の設定は大事です。


人物設定

 人物設定では、主人公や重要なキャラクターの基本的な設定すると良いでしょう。
 下記のような項目を設定すると良いと思います。(すべてを設定する必要は無いです。大体状況が把握できる程度に決めておきましょう)


◆名前
 キャラクターの名前です。

 
◆年齢
 キャラクターの年齢です。
 年齢は、けっこう適当に決められてしまうことが多いかもしれません。実際、適当でも良いのですが、少し真剣に考えてみると、個性的なキャラクターが出来るかもしれません。
 RPGの主人公は、若者であることが多いですが、思い切って老人にするというのも無い話ではありません。


◆性別
 キャラクターの性別です。
 性別も、けっこう適当に決められてしまうことが多いかもしれません。筆者自身、性別をどちらにするかで悩んだことはありません。
 ただ、仲間が居てパーティを組むような場合は、性別の比率など考えたほうがいいかもしれませんね。
 無難なのは、男女同じくらいの比率にしておくことでしょう。
 また、意図的に偏った比率にするというのも面白いかもしれません。女だけの冒険者グループとか、逆に男ばかりで女は一人、つまり紅一点とか。この場合、その女性キャラはモテモテとか、女王様キャラとか、色々考えられます。


◆種族・民族
 RPGには、人間以外の種族というものけっこう登場します。また、人間でも民族の違いによって、考え方や文化や信仰が違ったりします。
 したがって、種族や民族というのも、キャラクターを特徴付ける重要な要素になります。


◆外見
 キャラクターの外見です。
 実際の外見は、グラフィック担当者が描くことになるでしょうが、これはその元になる設定です。
 身長、体重、体型、外見上の特徴などを書きます。
 外見は、グラフィックを描くときの元になる設定ですので、その点を踏まえて、きっちり決めておいたほうが良いです。
 例えば、必要に応じて、肌の色や目の色、髪の毛の色や長さ、ヘアースタイルなども決めます。


◆性格
 キャラクターの性格を書きます。
 性格は、キャラクターの魅力に直結しますのでとても大事です。
 主要人物には、なるべくハッキリした性格付けをしておいた方が、書きやすいでしょう。
 熱血かクールか、おしゃべりか無口か、押しが強いか引っ込み思案か、陽気か陰気か、というようにちょっと極端なくらいの性格付けをしておくとわかりやすいです。


◆職業
 RPGの職業には、2つ意味があります。
 シナリオの設定上の職業と、ゲームシステムでの職業(クラス)です。ゲームシステムで職業が決まっている場合、当然それに合わせることになるでしょう。

 シナリオの設定上の職業としては、シナリオのテーマを実現するのに向いた職業を、選んでいくことになると思います。
 例えば、勧善懲悪ものなら主人公は勇者とか戦士に。冒険ものならトレジャーハンターや考古学者などもいいでしょう。
 復讐ものなら、復讐のために盗賊や傭兵なるとか、あるいは元々医者でその知識を生かして復讐するなど、色々考えられるでしょう。
 逆に、まったく似つかわしくない職業にすることでキャラクターの魅力を出すというのもあります。例えば、復讐がテーマで、主人公を聖職者にします。
 普通、聖職者は復讐のテーマには似つかわしくありませんが、あえてそういう職業を選ぶことで、より主人公の人間性をあぶりだすことも可能です。
 例えば、妻を誰かに殺され犯人を憎く思うが、神に仕えるものとして、そういう気持ちは抑えなければならない。しかし、ある日ふとしたきっかけで犯人が誰か分かってしまう(例えば犯人の知人が懺悔に来るとか)。そして、復讐心と聖職者としての倫理の間で悩み葛藤する、という具合です。

 また、職業は個性にもなります。例えば、漁師だから海や魚のことに詳しいとか、逆に漁師なのに魚嫌いという設定にしても面白いかもしれません。
 主人公がパン屋だとして、冒険がテーマなら麺棒で戦かわせるとか(これはシステムにも関係してきますが)、恋愛がテーマなら、好きな人に最高のパンを焼いてプレゼントするために、材料集めをするとか。その職業ならではの要素を入れていくと面白いです。


◆バックグラウンド
 キャラクターの生い立ち、つまりバックグラウンドを作っておくと、それがキャラクターの厚みになります。
 例えば同じ勇者でも、バックグラウンドによって色んなタイプが考えられます。「父親が勇者で、勇者になるべく英才教育を受けて育った」とか、「遠い祖先が勇者だったというだけで、自分に才能があるなどとまったく思わずに育った」とか、「代々農家の家系に育った少年が勇者になるのを夢見て、その思い込みだけで勇者になろうとしている」とか、色んなパターンがあり得ます。


◆呼称
 自分のことを何と呼ぶか、僕か俺か、私かあたしか、といったことを決めておきます。
 シナリオを書いているうちに、混乱して間違えることもあるので、決めておくと良いです。
 また、他のキャラに何と呼ばれるかも、書いておくといいかもしれません。


その他の設定

 世界設定や人物設定以外にも、設定しておいた方が良いことがあります
 例えば、下記のようなことです。


◆主人公のタイプ
 RPGの主人公は、大きく2つのタイプに分けられます。
 それは、強い個性を持ち自分の意思でしゃべり行動するタイプと、個性が弱くしゃべったり勝手に行動したりしないタイプです。
 有名なゲームで言うと、前者がファイナルファンタジーのタイプで、後者がドラゴンクエストのタイプです。
 どちらかのタイプにハッキリ決めるのが良いと思います。
 もちろん、企画でどちらかに決められることもあります。

 どちらのタイプを選ぶかで、シナリオの書き方は変わって来ます。
 基本的に、書きやすいのは前者、個性的なタイプです。
 後者の無個性タイプは、なにせ主人公がしゃべらないのですから、会話が成立しずらくて困ります。
 また、無個性タイプの主人公を選ぶときは、「プレイヤーが主人公になりきってプレイする」という形を目指していることが多いため、その点でも苦労があります。なぜなら、プレイヤーの意に添わない行動はさせにくいため、シナリオライターの自由に出来ないことが多いからです。

 あなたが初心者なら、個性的なタイプを選んだほうがいいと思います。(もちろん、企画担当者が許せばですが)
 無個性タイプを選ぶなら、個性的な仲間を登場させて、そのキャラにシナリオを展開させる役目を果たしてもらうと良いでしょう。 



◆どのような表現手段を用いるか
 シナリオは、主に状況説明と台詞で成り立ちます。
 状況説明は、普通は文章としては表示されず、グラフィックやサウンドで表現されます。台詞は、文章として表示されます。
 しかし、状況説明を文章で表示する場合もあります。
 例えば、男がニヤリと笑って「いいだろう。俺は、報酬さえもらえれば、文句は無いからな」という台詞をしゃべる場面を表現したいとします。
 この時、ニヤリと笑う部分は、グラフィックで表現することもできますが、文章で表現することもできます。
 「男は、ニヤリと笑った」「いいだろう。俺は、報酬さえもらえれば、文句は無いからな」と、両方とも文章表示で表示してしまうわけです。
 こういう状況描写は、小説では当たり前に使われている方法ですが(小説は絵が無いのだから当然ですが)、ゲームではあまり見られません。やはり、文章による描写より、もっと直接的なグラフィックによる描写を選ぶからでしょう。
 しかし、グラフィック担当者がいないとか、ノベルゲーム風にしたいとか、色々な理由で文章による描写を選ぶケースもあるでしょう。

 状況描写を有りにするか無しにするかは、どちらかにハッキリ決めたほうがいいと思います。中途半端だと、違和感を生む原因になります。

 また、台詞で状況描写をする方法もあります。先の例なら、「ふっ…。いいだろう。俺は、報酬さえもらえれば、文句は無いからな」などと書いて、「ふっ…。」で、笑ったことを表現します。

 描写には、状況描写の他に心理描写もあります。心理描写は、キャラクターの心理を書いたもので、例えば、「男は内心興奮していた」のようなものです。興奮状態にある、男の心理を書いているわけです。
 心理描写は、グラフィックで表現するには微妙で難しいので、小説のように文章で書いてしまえると楽ですが、ここまでやると本当に小説的になって、RPGらしくはないですね。
 また、心理描写の代わりに、キャラクターが心の中で思ったことを書いてしまうということもあります。先の例なら『5000ゴールド? ほんとかよ……。』といった感じです。(ちなみに、思ったより報酬額が多くて興奮しているところです)
 キャラクターの心理状態は、感情表現用のエフェクトで表現する方法もあります。キャラの頭の上にフキダシみたいのが出て、ビックリマークやクエスチョンマークなどを出すやつです。
 
 このように、ゲームには、色んな表現方法があるので、どのような表現手段があるのか、どのようなスタイルで表現していくのか、最初に決めておいた方がいいでしょう。
 もちろん、この決定には、他のパートも絡んでくるので、各担当者とよく話し合って決めましょう。



基本設定のヒント


基本的な世界設定
 ゲームの世界観は、シナリオに大きな影響を与えます。したがって、どのような世界設定にするか、よく考えて決めるべきです。
 とは言え、多くの場合、世界観は企画段階で決まっているでしょう。また、グラフィックやサウンドの関係で、選べる世界観が限定される場合もあります。
 シナリオ担当者は、決められた世界観の中で、なるべく面白いシナリオを書いていくことになると思います。
 とりあえずここでは、シナリオを書く際に参考になる情報を提供しようと思います。
 

◆ファンタジー
 RPGの世界設定で圧倒的に多いのが、ファンタジーです。ファンタジーと言うとかなり幅広い言葉ですが、RPGにおけるファンタジーというのは、いわゆる「ヒロイック・ファンタジー」とか「剣と魔法のファンタジー」のことです。
 なぜ、RPGと言えば、ファンタジーということになったかというと、それは世界最初のRPG「
ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」の世界観が、ファンタジーだったからです。(ちなみに、D&Dは、コンピュータゲームではなく、TRPGと呼ばれるものです。詳しくは検索で調べてください)
 ともかく、その後D&Dの影響を受けたRPGが数多く発売され、ファンタジーの世界観は、広く知られるようになりました。
 そのため、ファンタジーの設定は、プレイヤーに飽きられている面もありますが、みんな知っているので、分かりやすくて良いというメリットもあります。もちろん、作る方にとっても簡単です。
 また、元々神話や伝承に基づいたあいまいな世界であり、また魔法のような何でもありの設定が存在するので、あまりリアリティにこだわらず、気楽に書けるというのも大きなメリットです。

 ファンタジーの世界を勉強したいなら、下記のようなものを参考にしてはどうでしょうか。


ゲーム製作に役立つ本
 当サイトで紹介している本です。ファンタジー関係の本がたくさん紹介されていますので、ご覧ください。


○神話・伝承
 ファンタジーの元になっているのは、ヨーロッパの神話や伝承です。
 神話や伝承関係の本を参考にすると良いでしょう。
>>>神話関係の本

 また、下記のサイトなども参考になると思います。
>>>幻想世界小辞典-世界の神話のデータベース
>>>神話への門


○歴史・文化
 ファンタジーが、ヨーロッパをベースにしている以上、ヨーロッパの歴史や文化は無視できません。
 ヨーロッパの歴史や文化を紹介した本を参考にすると良いでしょう。
>>>ヨーロッパの歴史関係の本
>>>中世ヨーロッパの文化関係の本

 また、下記のサイトなども参考になると思います。
>>>ヨーロッパの歴史風景
>>>歴史研究所


○小説・映画
 シナリオを書く上で、小説や映画などの作品は、参考になります。
 ファンタジー作品を作る上で参考になる作品といえば、なんと言ってもトールキンの「指輪物語」です。世界初のRPGである「D&D」が指輪物語の世界観に影響を受けているので、当然指輪物語も後のRPGに大きな影響を与えることになりました。一度は、読んでみることをお奨めします。(ホビットの冒険など、トールキンの他の作品もオススメです)
>>>トールキン関係の本
 ご存知の通り、指輪物語は映画化されています。映画も参考になるでしょう。
>>>ロード・オブ・ザ・リング関係のビデオなど

 その他小説では、コナンシリーズ、エターナル・チャンピオンシリーズ、ゲド戦記など、読んでみてはいかがでしょうか。


○ファンタジーを扱うサイト
 インターネットには、ファンタジー関係のサイトがたくさんあります。参考にさせていただきましょう。
>>>幻想動物の事典
>>>不思議好き人間
>>>Dragon's Lair
>>>O∴H∴西洋魔術博物館


○和風ファンタジー
 ファンタジーは、西洋風というのが一般的なイメージですが、和風ファンタジーもあります。
 先に紹介した本やサイトの中にも、日本のファンタジーを扱っているものがありますので、参考にしてください。
 また、下記のサイトも参考になると思います。
>>>神社anecs



◆SF
 SFは、サイエンス・フィクションの略で、科学的な空想にもとづいたフィクションの総称です。
 必然的に未来を描いた作品が多くなりますので、「未来もの」と言ってもいいかもしれません。(必ずしも未来に限っているわけではないですが)
 このジャンルは、ファンタジーに比べて少し難しくなります。なぜなら、現実の社会や科学をベースにしているため、ファンタジーより精度の高いリアリティが求められるからです。現実と異なる部分が多いと、プレイヤーは違和感を感じてしまいます。
 そういう意味で、初心者にはちょっとハードルが高いかもしれません。あなたが初心者なら、わりといい加減でも違和感を感じにくいファンタジーをお奨めします。 

 それでもSFに挑戦してみたいという人は、下記のようなものを参考にしてはどうでしょうか。


○小説・映画など
 SFの古典と言えば、ジュール・ベルヌとH・G・ウェルズです。
 興味がある人は、読んでみてください。
>>>ジュール・ベルヌの本
>>>H・G・ウェルズの本

 その他小説では、アイザック・アシモフアーサー・C・クラークなど読んでみては、いかがでしょうか。

 映画やドラマ、漫画などでは、スター・トレック銀河英雄伝説攻殻機動隊などお奨めです。


○未来ファンタジー
 未来ものでも、あまり科学的考察など無い、あいまいな世界設定の作品も多数存在します。
 これらは、SFと言うより未来もののファンタジーと言った方がいいかもしれません。(もっとも、SFとの境界線は、はっきりしませんが)
 こういった作品は、漫画やアニメなどに多く見られます。本格的なSFより簡単です。



◆現代
 現代の世界は、我々が住んでいる世界ですから、特に説明は必要ないと思います。
 SFに比べると科学的な考察が必要ないため作りやすいですが、その反面、プレイヤーもよく知っている世界ですので、現実とのちょっとした差異が、大きな違和感になります。その点注意が必要です。

 特別な知識が必要ないという点で作りやすい現代ものですが、純粋な現代もののRPGというのは、そんなに多くないと思います。
 アドベンチャーゲームなどでは、学園ものや推理ものなど、現実の世界を舞台にした作品が多数ありますが、RPGの場合は、現代を舞台にしたファンタジーといった、作品が多いように思います。



世界観の構築
 ゲームに限らず、良い作品にはその作品なりの世界観があります。世界観のある作品は、その世界観に浸っているだけで心地よいものです。
 特にRPGの場合、プレイヤーがゲームの世界に入って行ってプレイするものですから、世界観が重要です。
 では、どうしたら、そんな世界観のある作品を作れるのでしょうか?
 世界観を生み出す要素のひとつは、設定です。しっかりと設定を作っておくことにより、統一感があり、きちんと筋の通った世界ができます。
 では、どのようにすれば、良い世界観を生む設定が出来るか、具体的に考えてみましょう。


◆綿密な設定
 資料を参考にしたりして、詳しい設定をしておけば、必然的にしっかりした世界観が出来ます。
 ただ、ここで注意すべきは、単に詳細に設定すれば良いと言うものではないということです。重要なのは、シナリオに生かせる設定かということです。
 シナリオに生かしやすい設定は、そこに暮らしている人の生活に密着した部分です。例えば、自然環境や産業、文化、宗教などです。これらの設定は、ゲーム進行にはあまり影響しないことが多いですが、だからこそシナリオ担当者が自由に出来る部分になります。
 システムやゲーム進行に関わる部分の設定は、企画担当者がします。企画担当者が、いわば世界の形を設定するわけです。
 シナリオ担当者は、その世界に命を吹き込み、より豊かにする作業をします。人々の生活や自然、文化などを描き、ゲームの世界を本当に人が暮らしているようなリアルなものにします。そのために、必要な設定をしておきましょう。


◆統一感
 統一感が無ければ、世界観が崩れてしまいます。しかし、ゲームは、作るのに手間がかかるため、複数の人が分担して作ったりしますので、どうしても統一感が出にくくなってしまいます。
 ある程度は仕方ないですが、せめてシナリオだけでも統一感を出すように、統一感のある設定をしましょう。
 そのためには、自分の中で設定をきちんと消化することが必要です。企画担当者が決めたこと、あるいは参考にした資料に書いてあることを、そのまま書いてしまうのではなく、一旦自分の中に取り込んで、どういう世界が出来るのか想像してみてください。
 どんな人にでも個性があります。同じ設定でも、書き手が異なれば表現も変わります。設定をいったん自分のフィルターに通してみてください。そうすれば、どんな設定をすべきか、あるいは企画担当者の決めた設定をどう生かしていくか見えてくると思います。
 そうやって、自分なりの世界観をイメージしていけば、統一感が失われることは無いでしょう。


◆独自性
 いくら綿密な設定をしても、それが良くある平凡なものなら、独特の雰囲気というものは出ません。
 とは言え、独自性・オリジナリティというものは、そう簡単に出せるものではありません。特に、あなたが初心者なら、いきなり独自性の強い世界にチャレンジするのは控えた方がいいでしょう。
 最初は、分かりやすいオーソドックスな世界設定にして、そこに何かひとつでいいので、自分独自のものを加えてみましょう。
 例えば、独自の宗教を設定して、その世界の人はみなその宗教を信仰しているようにするとか、あるいは独自の職業、植物や動物、気候や自然現象など、何でもいいので、自分独自の設定を入れてみると良いと思います。


◆設定をシナリオに反映させる
 設定は、ただ設定しただけでは意味がありません。それをシナリオに生かして、初めて意味が出てきます。
 設定をシナリオに生かすためには、ゲームに登場する人々の行動やセリフを、設定に添ったものにしていけばいいです。
 例えば、村人のセリフを考える時に、どんな設定でも関係ないようなセリフは書かずに、設定に添ったセリフを書きます。
 仮に、貧しい農村の村人なら、「いい天気ですね」より、「最近日照が続いて、困ってるんだ」の方が、同じ天気を話題にするのでも、より設定を反映しています。
 さらに、「このまま日照が続いたら、今年の税金は納められそうに無い」と言えば、村人の苦しい生活が感じられます。さらに、その後で城へ行った時、税金を取り立てる役目の役人が居たら、プレイヤーは「あの村人はどうなるんだろう?」と、想像してくれるかもしれません。
 このように、プレイヤーが、あれこれ想像してくれるようになったら、その世界を「生きた世界」として感じてくれているということでしょうから、設定をシナリオに反映させることに成功していると考えてよいでしょう。


キャラクターを生み出す
 キャラクターは、ゲームの中で重要な位置を占めます。良いキャラが出来れば、それだけでゲームは面白くなります。
 そこで、良いキャラクターを作るにはどうすればいいか、考えてみたいと思います。

◆特徴をハッキリさせる
 基本的には、主要キャラの特徴は、ハッキリしていた方がいいです。その方が分かりやすくて書きやすいですし、印象に残ります。
 キャラクターの性格などを設定する際、好きなもの、嫌いなもの、得意なこと、苦手なこと、癖、主義主張やこだわりなど、特徴を出しやすい設定をしておいた方がいいでしょう。


◆キャラの役割を考える
 キャラクターには、なんらかの役割を与えてやるのが望ましいです。
 役割というのは、シナリオ上での役割のことです。例えば、おっちょこちょいのトラブルメーカーならストーリーが始まるきっかけを作ったり、天然ボケなら事あるごとにボケをかましたり、口の悪いキャラならツッコミ役にしたり、といったことです。
 役割の無いキャラは、活躍しにくいので目立ちません。主要キャラは、ある程度目立ってくれないと困るので、役割を用意しておいてあげるといいでしょう。
 逆に言えば、役割を思いつかないようなキャラは、設定しない方がいいということになります。
 もちろんこれは、主要なキャラのことで、脇役やチョイ役にまで、それほど個性を持たせる必要はありません。


◆キャラクターの組み合わせ
 キャラクターは、一人ではなかなか個性を発揮できません。複数のキャラクターが登場して、会話などをして始めて、キャラクターが生きてきます。
 そのため、登場人物の組み合わせ、特に一緒に行動する仲間の組み合わせは、重要になります。

 まず、似たようなキャラを複数出すのはやめましょう。キャラが、かぶってしまうと、あまりいいことはありません。 例えば、先に書いた「役割を与える」ことに関しても、同じようなキャラだと役割も重複しやすいですし、「特徴を出す」ことについても、特徴が目立ちにくくなります。
 また、キャラクターの言動が重複して、くどくなってしまう可能性もあります。例えば「良い子」のキャラが登場するとして、それが一人なら良い印象を残すかもしれませんが、これが二人になると言動が重複してくどくなり、かえって「良い子さ」が鼻について嫌味になってしまうかもしれません。
 もちろん、あえて似たキャラを登場させる意味が無いわけではありません。きちんとした狙いがあってするなら問題ないでしょう。しかし、特に考えなしに似たようなキャラを出すのはやめた方がいいと思います。

 逆に、正反対の性格のキャラというのは、(シナリオ上は)相性がいいと思います。
 キャラクターには、良い面と悪い面があるのが普通ですが、正反対の性格のコンビは、お互いに悪い面を補えますし、お互いの引き立て役になれるので、個性が際立ちます。
 また、会話しても、意見が食い違うことが多いので、会話もふくらみますし、自己主張もさせやすくなります。そういうものを通して、個性を出していくことが出来ます。


◆悪役の魅力
 RPGには、多くの場合、悪役や敵役が登場します。彼らは、プレイヤーの目標であり、主人公の動機でもある、非常に重要な存在です。ですから、悪役のキャラクターも、しっかり考えて作っておきましょう。
 勧善懲悪の物語、特に子供向けの作品などでは、大した理由も無く、単に「悪い奴だから」というだけで、世界を滅ぼそうとしたり、人を殺したりする悪役が出てきますが、そういう悪役は、単純すぎて魅力に欠けますし、リアリティもありません。
 世界を滅ぼそうとするのでも、何か具体的な理由を設定しておくといいです。また、大きなことをしでかそうというのですから、性格や主義主張といったものも、きちんと設定しておきたいですね。そして、それをシナリオに反映させます。
 例えば、「人間の繁栄に危機感を感じ、このままでは、魔族は衰退して滅んでしまうと思い、魔族を集めて人間と戦おうとする」という設定なら、その敵役は意外とまじめな奴かもしれません。純粋に魔族の行く末を案じているわけですから。
 そういう設定だと、他の魔族と足並みが揃わなかったり、裏切り者が出たりといったことも有り得ますし、誰が王となるかでもめたりとか、みんなをまとめるために、不本意ながら力ずくで支配したりとか、複雑な状況や心理が生まれてきます。
 そうやって、シナリオを書いていくと、悪役・敵役も、単なる「強い敵」ではなくて、キャラクターとしての魅力を放ってきます。


◆ネーミング
 キャラクターの名前を決めるのに苦労する人は多いと思います。
 そこで、キャラクターの名前の付け方をいくつか考えてみましょう。

◇ひらめきで決める
 ぱっとひらめいた名前というのは、結構いい名前が多いですね。ただ、この方法は、ひらめかないことには、どうにもならないという欠点があります。なんとか、がんばってひらめいてください。

◇特定のジャンルの名称を利用する
 筆者の作品「クミとクマ」は、お菓子の名前で統一してあります。「トラベラー」は、宝石や鉱石の名前です。
 このように、特定のジャンルの名称を使うという方法もあります。他にも、花の名前、星の名前、神話に出てくる神様や天使の名前、特定業種の専門用語など、色々考えられます。

◇人名辞典を利用する
 インターネットには、色んな人名が載っている資料などもあります。
 検索サイトで、人名辞典を検索してみてください。下記の「怪しい人名辞典」などお奨めです。
>>>怪しい人名辞典

◇辞書を利用する
 英語の辞書などをパラパラとめくると、カッコいい名前が見つかるかもしれません。
 また、キャラクターの特徴を外国語に訳してみるというのもいいかもしれません。

◇もじる
 既にある名前や単語をもじってみると、いい名前が生まれることがあります。
 一字足したり引いたりするだけでも、けっこう印象が変わっていい感じになることがあります。


○名前は分かりやすく
 名前は、なるべく読みやすくて覚えやすいものにしましょう。
 名前が覚えられないと、キャラクターに対する愛着も減ってしまいます。
 特に、漢字の名前など、どうやって読んだらいいのか分からないような名前をたまに見かけますが、理由が無い限りそういうものは避けたほうがいいでしょう。どうしても、ややこしい名前になる場合は、振り仮名などつけましょう。


ストーリーを作る

 ストーリーという言葉には、ふたつ意味があります。
 ひとつ目の意味は、物語のことです。「ストーリー=物語」ですね。
 ふたつ目の意味は、物語の筋、物語の展開のことです。
 ここで言うストーリーは、ふたつ目の意味「物語の筋、物語の展開」の方を表します。


ストーリーの基本構造


◆起承転結

 文章の書き方を説明するとき、文章の基本構造としてよく取り上げられるのが起承転結です。誰でも一度は、この言葉を耳にしたことがあるでしょう。
 シナリオを書く上でも、起承転結は基本構造として通用します。
 皆さん大体分かっていると思いますが、起承転結の意味をおさらいしておきましょう。

○起
 「起」は、物語の導入部分です。
 プレイヤーに、主な登場人物や世界観、現在おかれている状況、などの基本的な知識を与えます。そして、物語が始まるきっかけを与えます。
 一般的なRPGでは、オープニングから導入部分が、この「起」にあたります。


○承
 「承」は、 展開部分です。「転」へたどり着くまで、物語を進めていきます。通常、起承転結の中で、もっとも長い部分です。
 一般的なRPGでは、世界を巡り、アイテムを集め、レベルを上げていく部分が、この「承」にあたります。


○転
 「転」は、クライマックスです。物語の中で最も盛り上がる部分であったり、物語を通じて表現したいことが表れてくる部分です。
 一般的なRPGでは、ボスキャラ戦や、ゲームを通じての大目的が果たされる部分が、この「転」にあたります。


○結
 「結」は、物語の結末を語る部分です。最終的にどうなったかということを書いて、プレイヤーを納得させ、物語をきれいに終わらせる部分です。
 一般的なRPGでは、目的達成後に故郷に戻ったりする部分や、エンディングが、この「結」にあたります。



 起承転結は、物語全体を構成する構造であるだけでなく、物語の中のより小さな構造も構成します。例えば、「承」の部分が、いくつかの小さい起承転結に分かれるということもあります。
 よくある魔王討伐もののストーリーだと、全体の起承転結は下記のようになります。

起:英雄の血を引く少年が王に呼ばれ、魔王討伐を命じられる
承:世界を巡り、仲間を集め、強くなっていく
転:魔王の居城へ乗り込み、魔王を倒す
結:世界が平和になり、新たな英雄伝説が生まれる

 この中で、「承」の部分が、さらに細かく分かれます。例えば、ある村に立ち寄ると、下記のようなことが起きるわけです。

起:母の病気を治すため、薬草を探しに行った娘が行方不明になる
承:娘を探して森に入り探索する
転:娘を捕らえていた魔物を見つけ倒す
結:娘を連れ帰り、村人に感謝され、母親も病気が治る

 このような、小さな起承転結がいくつも集まって、大きな「承」を構成しているというのが、普通です。
 「承」の部分は、長くなりすぎるとダレてしまうので、小さな起承転結でメリハリをつけ、クライマックスへ向けて盛り上げていくのが良いでしょう。


あらすじを作る

 あらすじとは、ストーリーを大まかに書いたものです。ストーリーの概要をつかむために必要になるものです。
 
 実際に、先の例を元に、魔王討伐もののストーリーのあらすじを書いてみましょう。(下記の例は、「テーマ」とか、「起」とか「承」とか、項目を分けて書いていますが、必ずしもそういう書き方をしなくてもいいです。ここでは、分かりやすいように書いているだけです)


◆あらすじの例

○テーマ

 メインテーマ:
  世界→ファンタジー世界で
  主人公→英雄の血を引く青年が
  目的→世界の平和を取り戻すために
  行動→魔王を打ち倒す
  感じてもらいたいこと→悪者を打ち倒す爽快感

 サブテーマ:
  孤独で人を信用しなかった主人公が、仲間と旅をするうちに、心を開き友情を育んでいく
  感じてもらいたいこと→友情、人を信じることの大切さ



○最初の状況
 主人公レイは、山で暮らしている。母と二人の生活
 レイの父親は、20年前の魔族との戦争で活躍した英雄だったが、レイが子供の頃に死んでしまった。それ以来、母親が女手ひとつで育ててくれたが、その間、かつての父の仲間も国も、誰も助けてくれなかった。
 そのため、レイは他人に不信感を持ち、人を信用しなくなっていた。


○起
 ある日、山奥で暮らしていたレイの元へ、ある噂が届く。城で剣術大会が開かれ、優勝者には賞金が出るというのだ。家計を助けたいという思いもあり、そして父親に習った剣術がどの程度通用するか確かめたいという思いもあり、参加することにする。
 剣術大会で好成績をおさめたレイは、他の入賞者と共に王に呼ばれ、そこで剣術大会を開いた理由を聞かされる。
 最近、魔族の勢力が力を取り戻しつつあり、今のうちに魔族に対抗できる力を育てるため、英雄候補の人材を選ぶために大会を開いたという。
 レイを含む8人の若者が、英雄候補として王の援助を受けて魔族の動向を探る旅に出ることになる。
 8人の若者は、2人一組になり、それぞれ東西南北に分かれて調査をすることになる。(レイは東担当)
 レイは、剣術大会で対戦したジンという陽気な青年と組むことになるが、他人を信用しないレイは、コンビを組むことを拒否し、一人で旅立つ。


○承

 ◇その1
 東方の町へ着くと、何やら騒がしい。
 話を聞くと、森へ薬草を探しに行った娘が帰ってこず、捜索隊を出す相談をしているという。
 そこへジンがやってきて、自分たちは王の使者だから任せておけと言って、勝手に娘の捜索を引き受けてしまう。
 ここでも、レイはジンを拒否し、一人で捜索に行く。しかし、ジンは勝手についてくる。
 森へ入ると、森の様子がおかしい。動物が凶暴化していたり、魔物がいたりする。
 そして、森の奥で魔族と遭遇する。実は、これは罠だった。英雄候補の若者が旅立ったことを知った魔族が、罠をはって待っていたのだ。
 敵に囲まれ、苦戦を強いられるレイとジン。勝ち目が無いと悟ったジンは、自分がおとりになるから逃げろと言う。逃げてこのことを、王に報告しろと。しかし、レイは意地になって戦おうとする。
 もう駄目かと思った時、二人の男が現れて、助けてくれる。男たちは、とんでもなく強く、魔族は逃亡する。
 男たちも、姿を消してしまい、結局何がなんだか分からないうちに、娘を助けることになる。
 囚われていた娘を助け、町へ戻ると、町の人に感謝される。

 ◇その2
 レイとジンは、一応娘を助け出したものの、魔族に歯が立たなかったことや、謎の男たちのことなど、納得いかないことが多すぎて、もやもやしている。しかし、ともかく報告のために城へ戻る。
 レイとジン以外には、誰も戻っておらず、二人の報告が唯一の手がかりとなる。
 他の英雄候補の者たちの捜索もかねて、今度は西方へ旅立つ。
 西方の町は、ジンの故郷なので、ジンの師匠に会って、もっと強くなりたいという。しかし、師匠は本当の剣は実戦で磨かれるものだから、これ以上は教えられることは無いという。ただ、魔族と戦うなら剣士だけではなく、魔法使いを仲間にしろと言われる。
 そこで、近くの山に住む、賢者と呼ばれる男を訪ねることに。レンは仲間を増やすことに抵抗を感じたが、その男が、かつてレンの父親と共に戦った仲間だと知って会いに行くことに。
 賢者と会って話を聞き、王の陰謀でかつての仲間たちがバラバラになってしまったことを知る。
 賢者は、弟子の少女を連れて行けと言い、少女アマルダを仲間に加える。

 ◇その3
 町へ戻ると、英雄候補の若者の情報が得られ、彼らが廃坑へ向かったと分かる。
 廃坑を探索すると、廃坑の奥で魔族に出会う。そして、その魔族から、すでに若者たちを殺したことを聞かされる。さらに、魔族に指示を出している、現在の魔族のトップの名前を聞かされる。
 廃坑の魔族は、レイたちも殺そうとするが、レイたちは返り討ちにする。

 ◇その4
 城へ戻り報告すると、北へ行っていた若者のうちの一人、魔法剣士のバインツが戻っている。彼も、魔族に襲われ逃げてきたという。もう一人の若者は、死んでしまったらしい。
 王の命令で、もう一度バインツと共に北へ向かい、魔族を倒すことになる。
 北の町の氷の洞窟へ行くが、バインツの裏切りにより、閉じ込められてしまう。しかし、またもや謎の男二人が現れ、助けてくれる。
 今度こそ、二人に正体を聞くと、彼らもレイの父親の仲間だと分かる。賢者の指示で、レイたちを守るため監視していたらしい。しかし、彼らはあまり詳しいことは話さず、また去ってしまう。
 洞窟の奥へ行くと、バインツがいる。戦い、勝利すると、バインツは正体を現す。その正体は、魔族だった。魔族を倒すと、洞窟の奥に本物のバインツが囚われている。
 バインツに聞くと、あの魔族は、コピーの能力を持っていて、好きな姿に変化することが出来るということが分かる。ただ、コピーの能力を使うためには、コピー元が生きていないといけないため、バインツは生かされていたらしい。
 バインツを仲間に加え、城に戻る。

 ◇その5
 城へ戻ると、今度は南の調査を命じられる。
 南の漁師町で、英雄候補の若者が、鍾乳洞へ向かったきり、戻らないという。
 鍾乳洞へ行くと、そこに、最初に出会った魔族が居る。仲間も増え、強くなっていた主人公たちは、今度はその魔族を倒す。
 しかし、若者たちは殺されており、これで、生き残ったのは、レイとジンとバインツだけだということが分かる。
 報告のため、城へ戻る。


○転
 城へ戻ると、大騒ぎになっている。王子が王を殺し、権力の座についていた。
 しかし、それに反発した者たちが城を出て、砦に立てこもっている。
 王子は、自分の正しさを主張し、主人公たちに自分と共に戦えと言う。
 砦へ行くと、今度は城を出た者たちが、自分たちの正しさを主張し、主人公たちに仲間に加われと言う。
 どちらの言うことが正しいか分からず、迷っていると、かつての父の仲間たちが現れる。
 彼らは、ついに真の目的を話す。
 賢者は、城に居る弟子から情報を得ていた。そして、最近城の中に不穏な空気が流れ出したことを察知する。城の中に、魔族の手のものがもぐりこみ、国を内部から崩壊させようとしているらしいと言うのだ。
 しかし、確証はないし、それが誰なのか分からないため、今まで表立って動けなかった。だが、王子が王を殺すという事態になって、動かないわけには行かなくなった。また、王子の凶行からして、魔族の手の者は、王子側にいると推察できる。
 もし、城の兵士と砦の兵士が戦うことになれば、国は致命的な打撃を受ける。それを防ぐために、城に居る魔族の手先を見つけ出して、抹殺することに。
 そこで、主人公たちは、王子の側につくことにして城にもぐりこみ、調査することになる。
 城で、聞き込みをして調査していると、大臣の関係者の証言から、大臣が怪しいと判断する。
 大臣の部屋へ行くと、大臣が襲ってくる。戦闘で勝利すると兵士が駆けつけ、大臣を殺した罪で捕らえられる。
 この時、レイは戦って逃げることを主張するが、アマルダが必ず師匠が助けに来てくれるから、ここは大人しく捕まろうと説得し、それに従う。
 取り調べで、大臣の方から襲ってきたと主張するが、結局その主張は通らず、処刑されることに。
 処刑前夜、レイの父の仲間が助けに来て牢を脱出するが、そこに兵が待ち伏せている。宰相が、きっと仲間が助けに来ると考え、兵をしのばせていた。
 しかし、それを賢者は読んでいた。逆に罠にはめ、兵士を眠らせてしまう。
 賢者は、宰相が魔族の手先だと考えていた。宰相を問い詰めると、魔族の手先になっていたことを認め、魔族は自分の私邸に居ると白状する。
 宰相の私邸に乗り込み、ラスボスと戦い、倒す。


○結
 宰相が魔族に操られ、そして王子はその宰相にたぶらかされていたことが分かり、城の兵士たちは過ちを認め、砦の兵士たちを迎え入れる。そして、砦の兵の指導者を中心に、国を立て直すことになる。
 宰相は捕らえられて、王子も軟禁されることになる。レイの父の仲間たちは、城に残って国の再建に力を貸すことになる。
 レイたちは、魔族を倒し英雄と呼ばれることになるが、レイは、まだ英雄と呼ばれるのは早いと言って、そう呼ばれることを頑なに拒否する。
 そして、もっと強くなるために、また各地に残っているであろう魔族を滅ぼすために、旅に出る決意をする。
 レイは、一人で行こうとするが、結局ジンやアマルダに見つかってしまい、みんなで行くことに。
 レイたちの新たな旅立ちで、終わる。



◆解説
 とりあえず書いてみました。この程度書けば、ストーリーがどう流れていくかは、分かるでしょう。
 このあらすじは、一本道のストーリーです。分岐やクリアの順番が変化することは、想定していません。
 初心者の方は、こういう書きやすい一本道のストーリーから挑戦するのが良いでしょう。

 全体で、起承転結に分けて書いていますが、「起」自体も小さな起承転結で構成されています。
 また「承」は、その1からその5までの、5つの小さな起承転結で構成されています。「転」もひとつの小さな起承転結で構成されています。


◆あらすじの修正 
 あらすじの段階で、修正すべき点は、修正しておきましょう。ゲーム制作が進めば進むほど、修正は難しくなっていきますので、手を入れておくなら今のうちです。
 もちろん、シナリオ担当者一人ではなく、企画担当者や他のパートの担当者にもあらすじを読んでもらって、いっしょに検討します。
 下記のようなことを、チェックしてみましょう。 

○ゲームコンセプトと合っているか?
 ゲームの方向性とズレてしまっていないか、チェックしましょう。

○ゲームシステムとの兼ね合いはどうか?
 あらすじに書いたことが、ゲームシステムで実現できるとは限りません。
 例えば、最初に剣術大会が開かれることになっていますが、システム担当者が「剣術大会なんて作れないよ」と言ったら、最初から考え直さなくてはなりません。
 また、氷の洞窟で閉じ込められるというイベントがありますが、もしこのゲームに洞窟を脱出する魔法があるなら、「閉じ込められる」ということが、成立しなくなります。
 この場合、シナリオを書き換えるか、魔法が使えない状況にするなどの対策を考えなくてはなりません。

○シナリオのテーマを実現できそうか?
 シナリオのテーマをちゃんと実現できそうか確認しましょう。
 例えば、上記の例の場合、メインテーマは、魔王討伐なわけですが、最後のボスキャラである魔族は、魔王と言うには少々小物の雰囲気です。この点で、盛り上がりに欠ける恐れがあります。
 それから、サブテーマの「主人公が、仲間と旅をするうちに、心を開き友情を育んでいく」というのも、どの程度表現できるかいまひとつ分かりません。
 もちろん、これはあらすじであって、完成品には程遠い段階ですから、この段階ですべてを表現しきれていないのは当然です。ですから、これからシナリオを書いていくうちに、十分表現できるという自信があるなら、これでかまわないでしょう。
 特に、友情を育むというあたりは、キャラ同士の会話などで表現したいところですから、セリフが無いあらすじの段階では、見えてこなくても仕方ありません。
 
○長さは適当か?
 あらすじの長さで、ゲームの長さがある程度予想できます。
 例えば、上記のあらすじの場合、最低限下記のマップが必要でです。
・主人公の家
・城と城下町
・東方の町と森
・西方の町と賢者の家と廃坑
・北方の町と氷の洞窟
・南方の町と鍾乳洞
・砦
・宰相の私邸
 これらのマップで、イベントが起きますし、洞窟などでは探索や戦闘をします。各マップでのプレイ時間が平均20分とするなら、プレイ時間の合計は4時間超になります。
 また、敵が出る洞窟などの場所で、主人公たちのレベルが平均2上がるとするなら、ゲームを通してレベルは8段階くらい上がるということになります。
 こういった計算から、長さが適当かどうか、企画やシステムと照らし合わせて検討しておくと良いでしょう。

○ストーリー上の問題は無いか?
 展開が強引だったり、分かりにくかったり、矛盾があったりしないかチェックしておきましょう。


プロットの作成

 プロットとは、物語の筋を表す言葉です。そういう意味では、あらすじと似たような言葉ですが、ここでは別のものとして扱います。
 ここでは、プロットは下記のようなものと定義して、話を進めていきます。

 ・ゲームに登場する主な出来事を、場面ごとに分けて説明するもの
 ・ゲーム中に登場する主な「場所」「人物」「出来事」などが書き出されているもの
 ・ストーリーがすべて書かれており、シナリオの骨格となるもの


プロットを書く

 実際に、先のあらすじの例を元に、魔王討伐もののプロットを書いてみます。
 下記のプロットの例は、あくまで一例です。必ずしも、下記のような書き方をしなくても良いです。もちろん、ゲームのタイプや内容によって、書き方も変えないといけないでしょう。
 なお、{}内に補足説明を書いています。これも、書いても書かなくても、どちらでも良いです。


◇プロローグ
場所:主人公の家
時代:レイが子供の頃(5歳くらい)
 レイと母親が、家に居る。雨の音が聞こえる。
 家の外で、話し声が聞こえる。母親が玄関のドアを開けると、村人が入ってくる。そして、父の死を告げる。
 母親が外へ飛び出し、レイも続く。
 何人かの村人と共に、父の変わり果てた姿がある。父の遺体にすがり付いて、号泣する母親。雨の中、立ち尽くすレイ。

{プロローグでは、細かい説明は無しです。ただ、レイにとって、父親の死がショックだったということだけ表現できれば良いと思います。}


◇オープニングイベント
場所:主人公の家
時代:現在(レイ17歳)
 レイの母が、台所にいる。レイが外から帰ってくる。
 母親が、文句を言う。レイが、城で開かれる剣術大会のことを黙っていたためだ。レイは、参加するつもりはないから、関係ないと言うが、母親はレイの気持ちを見抜いていた。レイは、母に心配をかけまいと、参加したい気持ちを抑えていたのだ。
 母は、参加を勧め、レイも納得する。

{ここで、レイの父が死んだことや、かつて英雄と呼ばれていたことなどが明らかにされます。}


 レイは、自分の部屋へ行き、寝る。夜が明けると、剣術大会へ出発。


◇ふもとの村
 レイの家の近くの村。イベントは特になし。

{剣術大会に関する情報が得られます。また、村人との会話から、レイのことやレイの父親の人となりが分かるようにします。}

 
◇ジンとの出会い
場所:城下町の宿屋の一階の酒場
 店員の女の子が、男に絡まれている。見かねてレイが助けようとすると、ジンが先に行動し助ける。

{ジンの性格、正義感が強かったり、女の子に甘かったりする部分が表現できればと思います。}

 剣術大会は、翌日なので、一泊する。
 一泊してから、城へ行くと大会に参加できる。


◇剣術大会への登録
場所:城の広場
 受付のところへ行って、名前と出身地を登録する。
 ここで、英雄の息子であることがバレる。

{英雄の息子であることがバレた後は、強敵と見なした参加者たちから意識され、話しかけられたり挑発されたりします。ここで、主な強豪と会話できます。}


◇剣術大会予選
場所:城の広場の特設闘技場
 3試合ほど戦い、勝ち抜くと予選通過。8人までにしぼられる。
 この段階で負けた場合、話が続かないので、救済措置として、決勝に残った者のうちの一人が怪我で出場できないため代わりに出ることになる。


◇剣術大会決勝トーナメント
場所:城の広場の特設闘技場
 決勝トーナメントは、王の前での試合となる。
 8人なので、3回勝ち抜くと優勝。
 必ずしも優勝する必要は無いが、なるべく勝ったほうが、報奨金がもらえてよい。
 
{勝ち進めば、後に仲間になる、ジンやバインツとも対戦します。}


◇王と謁見
場所:城の中 謁見の間
 剣術大会で決勝トーナメントに残った8人は、王からお褒めの言葉を頂けるということで、城の中へ通される。
 レイは、王に対してあまり良い印象を持っていなかったので、断ろうとするが、ジンに無理やり引っぱっていかれる。
 王は、そこで剣術大会を開いた理由を話す。(実際には、ほとんど宰相が説明する)
 最近、魔族の勢力が力を取り戻しつつあり、今のうちに魔族に対抗できる力を育てるため、英雄候補の人材を選ぶために大会を開いたという。
 8人の若者が、英雄候補として王の援助を受けて魔族の動向を探る旅に出ることになる。
 レイは、王の命令を聞くことには乗り気でなかったが、父と同じ仕事が出来るということと、手柄を立てれば王から報奨金がもらえるため母を楽にしてやれると思い引き受けることに。
 8人の若者は、2人一組になり、それぞれ東西南北に分かれて調査をすることになる。(レイは東担当)
 レイは、ジンと組むことになるが、他人を信用しないレイは、コンビを組むことを拒否し、一人で旅立つ。



◆解説
 とりあえず最初の方だけ書いてみました。全部書いたら、かなりの量になるので、ここまでにしておきます。
 あらすじは、ストーリーの筋だけ考えればよかったですが、プロットはもう少し具体的なことまで考えたほうがいいと思います。
 上記の例で、「ふもとの村」について書いてあります。この村では、イベントは特に無いのですが、それでもここで得られる情報も、シナリオの一部として必要ですので、どういう情報が得られるか書いてあります。
 このように、プレイヤーがたどる道筋を順番に考えながら、必要なことを書いていきます。

 
◆素材リストへ
 素材リストというのは、そのゲームにどんな素材(グラフィックやサウンドなど)が必要かリストアップしたものです。これは、シナリオ担当者が作るものではなく、企画担当者が作るものですが、プロットは素材リストの元にもなります。
 プロットが出来ると、主人公が訪れる主な場所が決まります。また、主な登場人物も決まります。そうすれば、必要なマップ素材、キャラクター素材、音楽素材などが、だいたい分かります。
 そういったことを、明らかにするためにも、プロットをしっかり作っておくと良いです。


◆プロットの修正
 必要があれば、プロットを修正しましょう。
 プロットが出来ると、他のパートもどんどん作業が進んでいくと思います。本格的な作業が始まってからだと、修正が難しくなりますので、プロットの段階でちゃんと検討して修正しましょう。
 チェック項目は、あらすじの時と似たような感じでいいでしょう。


シナリオの作成

 いよいよシナリオです。最初にも書きましたが、シナリオとは「具体的に、各場面の場所や登場人物、登場人物の行動やセリフなどを書いたもの」です。

 ただし、シナリオの書き方は、ゲームの作り方によって変わってきます。
 キャラクターの台詞と簡単な行動の指定だけでなく、もっとプログラム的なものを要求される場合もあります。
 例えばフラグ(物語の展開によって変化する変数)の指定も合わせて行ったり、そのままゲームに実装できる、スクリプトのような形で書かなければならない場合もあるでしょう。
 ここで紹介するのは、最も単純なものですので、これがゲームシナリオの全てではないと承知しておいてください。


シナリオを書く

 実際に、先のプロットの例を元に、魔王討伐もののシナリオを書いてみます。

 下記のプロットの例は、あくまで一例です。必ずしも、下記のような書き方をしなくても良いです。もちろん、ゲームのタイプや内容によって、書き方も変えないといけないでしょう。


◇プロローグ
場所:主人公の家
時代:レイが子供の頃(5歳くらい)
BGM:雨の音

画面の色調を、色あせた感じに。
レイと母親が、居間に居て、暖炉の前に座っている。暖炉の火が燃えている。
二人は黙っている。
母親(心配そうな顔)「…………。」
レイ(不安そうな顔)「…………。」

しばらくして、家の外で、話し声が聞こえる。(話し声の効果音)
母親が玄関へ移動してドアを開けると、村人が入ってくる。
レイも母親の後ろへ歩いてくる。

村人「ソフィアさん……。」
母親(心配そうな顔)「あの、お…夫は……?」
村人「見つかりましたが、その……。すでに……。」
母親(悲しそうな顔)「……!」
村人「どうしますか? ご遺体を……その、中に────」

母親が、村人を押しのけて外へ出る。
家の外のマップに変わる。
家の前に、数人の村人が居る。彼らの中央に、レイの父親の遺体がある。
母親は、遺体に近寄る。
母親(悲しそうな顔)「あ……あなた……。」
父親にすがり付いて、号泣する母親。
母親(泣き顔で)「あなたぁ! あなたぁ……!」

この時点では、家のドアは、マップの外に切れていて見えない。画面がスクロールすると、ドアの前で雨の中、レイが立ち尽くしているのが見える。

レイ(不安そうな顔)「…………。」

画面が徐々に暗くなる。
雨の音も小さくなる。


◇オープニングイベント
場所:主人公の家
時代:現在(レイ17歳)
BGM:山のBGM

レイの母が、台所にいる。レイが玄関から入ってくる。レイのグラフィックは、普段着。

レイ「ただいま……。」
母親「おかえりなさい。」

レイが通り過ぎようとすると、母親がレイの方を向く

母親(怒った顔)「レイ。母さんに何か言うことがあるんじゃない?」
レイ「言うことって?」

母親は、紙を取り出し、書いてあることを読む。

母親「来たれ、勇気ある若者よ! 剣術大会開催!」
レイ「ああ、それか……。」
母親(笑顔)「こんな大事なこと、母さんに黙ってるつもりだったの?」
レイ「それは、出ないことにしたんだ。」
母親(驚いた顔)「どうして?」
レイ「どうしてって、俺は別に剣士じゃないし、仕事があるだろ?」
母親(驚いた顔)「だってあなた、毎日剣の稽古してるでしょ? 仕事だって、休めばいいんだし。」
レイ「剣は、趣味でやってるだけさ。それに、怪我でもしたら仕事できなくなるだろ?」
母親「大丈夫よ。母さんだってまだ働けるんだから。安心して怪我していらっしゃい。」
レイ(困った顔)「か、母さん……。」
母親「分かってるわよ。あなたの考えていることくらい。本当は出たいくせに、私のために、我慢してるんでしょ?」
レイ「確かに、それもあるけど、それだけじゃないんだ……。」
母親「なあに? それだけじゃないって?」
レイ「俺、城には行きたくないんだ。王の前で、試合なんかしたくない。」
母親「どうして?」
レイ(怒った顔)「どうしてって、母さんだって分かってるだろ!? あの王が、どんなに冷たい人間か! 父さんは国を救った英雄なのに、用が済んだらこんな山奥に押し込めて……!」
母親「あら、あなたこの山が嫌いだったの?」
レイ(困った顔)「別に嫌いじゃないけど……。」
母親「そうでしょ? 父さんも好きだったのよ。こんないい土地を頂いたんだから、王様のこと悪く言っちゃいけないわ。」
レイ(怒った顔)「でも、父さんが死んだ時だって、葬式にも来なかったし……。」
母親「王様が、こんな山奥まで来るわけ無いでしょ?」
レイ(怒った顔)「でも、使者をよこすとか、なんかあるだろ!?」
母親(心配そうな表情)「…………。」
母親「やっぱり行きなさい、レイ。」
母親「あなたの目で確かめてくるの。王様がどんな人かね。優勝すれば、話ができるんでしょ?」
レイ(困った顔)「うん……。」
母親「それとも、優勝する自信は無い?」
レイ(怒った顔)「そんなこと無いよ! 俺は父さんの子だ。出るなら、絶対優勝する!」
母親(笑顔)「じゃあ、決まりね!」
レイ「うん……。」
母親(笑顔)「それじゃあ、精のつくもの、作らなくちゃね。」

母親が、台所へ戻る

レイ「…………。」

レイは、自分の部屋の入り口へ歩いていく。画面が暗くなる。BGMもフェードアウト。
場所を、主人公の部屋へ移動。レイのグラフィックは、寝巻き姿に変更。ベッドで、寝ているところから始まる。
宿屋で泊まった時の音楽。
画面が明るくなる。BGMもフェードイン。

レイは、起きてタンスの前へ行く。グラフィックを、剣士の姿に変更。

レイ「父さん……。行ってくるよ……。」

レイは、部屋の出口へ移動。場所を、リビングに移動。

プレイヤーがコントロールできる状態に。



◆解説
 とりあえず最初の方だけ書いてみました。全部書いたら、かなりの量になるので、ここまでにしておきます。
 一応、顔グラ有りという前提で、表情も書いています。表情指定が無いのは、普通の表情ということです。この指定の仕方も、別にああいう書き方でなくてもいいです。企画担当者や顔グラ担当者と話し合って、分かりやすい書き方を考えましょう。
 どの程度細かい点まで指定するかも、製作の状況によって変わってきます。例えば、画面の切り替え方やBGMのことまで指定しなくていいという企画担当もいるでしょう。そのあたりも、話し合って決めていくしかないですね。


◆シナリオを書くときの注意
 シナリオは、先に書いたプロットに、セリフなどを付け足していけばできます。ただ、プロットとは、根本的に違った考え方で書かないといけません。それは「実際にゲームでどのように表現するか」ということを考えて書くということです。
 例えば、『主人公は怒って「私は、知りません」と言う』というシナリオを書いたとします。
 このとき、もしこのゲームに顔グラフィックや立ち絵など、主人公の顔を描いたグラフィックあり、表情を変えられるのであれば、容易に表現できますので問題ありません。
 しかし、そういったものが無い場合、怒った様子を表現できないわけです。そういう、表現できないことを書いてはいけません。
 もし、顔グラも立ち絵も、感情表現エフェクトも何も無いなら、セリフなどを工夫して怒った様子を表現します。先の例なら、「私は、知りません!」というように、!マークをつけて強い調子にするなどして、表現可能な方法でシナリオを書いていきます。
 あらすじやプロットの段階では、具体的なことは後回しに出来ましたが、シナリオの段階では、「希望」や「予測」はなるべく排除し、「実際にゲームでどのように表現するか」ということを常に意識して書いていくべきです。

 
◆後のことを考えて
 シナリオ担当の仕事は、シナリオを書けば終わるかもしれませんが、ゲーム製作はシナリオが出来てからが本番です。この後、プログラム担当者が、シナリオを元に製作を行っていくでしょうから、その際に作業しやすいように書いておいた方がいいでしょう。
 例えば、名前とセリフの書き方にしても、先の例では、『レイ「どうしてって、俺は別に剣士じゃないし、仕事があるだろ?」』という形で書いていますが、実際にゲームで表示する時に、鍵括弧「」は使わないということなら、シナリオを書くときにも使わない方がいいでしょう。
 例えば、ゲームで下図のように表示するなら、


 シナリオを書くときも、下記のように書いておけば、そのままコピーできるので楽です。

【レイ】
どうしてって、俺は別に剣士じゃないし、仕事があるだろ?

 
◆シナリオの修正
 必要があれば、シナリオを修正しましょう。
 シナリオまで来ると、文章量が多く、複雑になってきますので、間違いや矛盾、表現の揺れなどが出てきます。他のひとに読んでもらって、チェックしてもらうと良いでしょう。
 また、書き足りずに、十分に表現できていないこと、説明不足になっているところ、逆に書きすぎて冗長になっているところ、くどくなっているところなども、チェックしてもらうと良いと思います。
 特に、書いている本人は全部分かっているので、つい説明を省いてしまうことがあります。そういう第三者でないと分からないような部分を、他人にチェックしてもらうとよいでしょう。



Last Updated : 2006-10-11

Copyright © 2006 入江ノジコ. All rights reserved.
http://tanktown.web.infoseek.co.jp/tt/tt_top.htm