ゲームの作り方 シナリオ編



より良いシナリオを作るためには

 ここでは、より良いシナリオを書くための方法を考えてみたいと思います。


ストーリーについて




 

基本はシンプル

 ストーリーには、流れがあります。何か出来事が起こり、それに対して主人公が行動し、また次の出来事が起こり、と順番に進んでいきます。
 プレイヤーにとって、ストーリーの流れは、シンプルな方が理解しやすいですが、シンプルすぎると単調でつまらなくなる可能性があります。そこで、シナリオライターは、面白いストーリーにしようとして、色々と工夫します。
 工夫すること自体はいいのですが、RPGの場合、多少注意が必要です。それは、映画や小説などにくらべ、RPGのストーリーは、理解されにくいということです。

 RPGの場合、ストーリーの流れは単純ではありません。そもそも、映画などと違って、RPGのストーリーは同じペースで一方向に向かって流れていくものではありません。プレイヤーのプレイの仕方により、ストーリーは停滞したり、横道にそれたり、時には分岐したりします。
 またRPGは、シナリオを読むだけではなく、他にもたくさんやることがあります。敵と戦ったり、レベルを上げたり、新しい技を習得したり、攻略のヒントを探して町の人と話して回ったり、そのたびにストーリーの流れは中断されますし、プレイヤーの意識はストーリーから離れます。
 また、プレイ時間の問題もあります。映画を小分けにして観る人はあまりいないと思いますが、ゲームは小分けにしてプレイされます。1日1時間のプレイで、1〜2週間かけてプレイする人もいるわけです。そうなると、最初の頃に起こった出来事を、最後の方には忘れているという可能性もあります。

 さらに、ゲームの場合、プレイヤーがプレイしないと先へ進まないという問題があります。ストーリーが難解で理解できなかった場合、最悪そこで詰まってプレイが中断してしまう可能性もあります。

 結論を言うと、RPGのシナリオは、あまり複雑にしない方がいい、ということになります。特に、あなたが初心者なら、いきなり複雑な展開のストーリーを描くのはお奨めしません。複雑なものには、十分に経験をつんでからチャレンジすると良いでしょう。


 ストーリーの流れをシンプルにするためには、以下のような点に気をつければ良いと思います。

◆時間の流れに逆らうな
 時間の流れにそって、ストーリーを進めていけば、分かりやすくなります。
 未来のことを先に書いたり、過去に戻ったり、時間を大きく(何年とか何十年とか)進めたり、いつの時代かはっきり分からないような書き方をしたりすると、分かりにくくなります。
 もし、回想シーンなど、別の時間のことを描きたいと思ったら、画面の色調を変えるなどして、はっきり回想シーンだと分かるような描き方をするべきです。

◆視点を変えるな
 ずっと同じ人物の視点で描きましょう。当然、同じ人物とは主人公のことになります。主人公が途中で変わったり、主人公のいない場面を書いたりすると、分かりにくくなります。
 
◆必要なことを必要なときに
 例えば、ある町で事件が起こるとしたら、その町で必要な情報がすべて得られるようにします。
 関係ない情報出したり、その町で必要な情報を他の町で出すこともしません。そうすれば、分かりやすくなります。


少し複雑に

 前の項で「シンプルに」と書きましたが、あまりシンプルすぎても、変化の無い単調なストーリーになってしまいます。そこで、必要に応じて(それからあなたの技量に応じて)少し複雑なことにも挑戦してみましょう。


メリハリ
 物語は、ずっと同じ調子で展開していくわけではありません。盛り上がる部分もあれば、落ち着く部分もあります。
 例えばアクション映画でも、手に汗握るハラハラするようなシーンがあれば、その次にはホッとできる落ち着いた場面があります。
 ずっとハラハラするようなシーンを続けていては、視聴者は疲れてしまいますし、感覚が麻痺してあまりハラハラしなくなってしまいます。ですから、落ち着くシーンをはさんで一旦気持ちを落ち着けてもらい、そこから再び盛り上げていくのです。
 このように、意図的に盛り上げたり、落ち着けたり、緊張させたり、のんびりさせたりと、プレイヤーの心理状態の変化を意識してシナリオを書けるようになると良いです。

 しかし、RPGの場合、ストーリーだけではないため、映画などとは多少事情が変わってきます。例えば、町の中で人に話を聞いて回るときは、プレイヤーは比較的落ち着いているでしょうし、洞窟の中を探検している時は、緊張しているかもしれません。このように、ストーリー部分以外でも色々あるため、ストーリーのことだけを考えて書いていても、うまくいきません。ゲーム全体を意識して考えるようにしましょう。



意外性
 シンプルなストーリーは、先が予測しやすいストーリーと言えます。プレイヤーが先を予測できれば、プレイはしやすくなりますが、単調で型にはまったストーリーだと感じられてしまう可能性もあります。
 そこで、少し意外性を取り入れてみましょう。意外性を出すのは、そう難しくありません。普通だったらこうなるだろうという展開の逆をやればいいのです。

 例えば、「ある町で少女が病気で死にかけている。森に生えている貴重な薬草があれば助かるらしい」という展開なら、プレイヤーは、「その薬草を取ってくれば少女が助かって、ご褒美に何かいいことがあるんだな」と思います。それが正統派の展開なら、それを逆にしてやればいいわけです。例えば、「薬草を取ってきたが間に合わず、少女は死んでしまう」とか、あるいは「薬草が見つからず、少女を見殺しにしてしまう」といった感じです。
 このように、オーソドックスなストーリーを、180度ひねってみたり、90度ひねったり、360度ひねったりしてみると、意外性のあるちょっと複雑な展開が生まれます。
 360度ひねったら、元に戻っちゃうんじゃないかと思うかもしれませんが、そうでもありません。結果は同じでも裏があるストーリーというのもあります。例えば「実は少女の病気は嘘で、主人公たちの力や正義感を試すために村長が仕組んだことだった」というようなものです。結果としては、薬草を入手して、少女は死なず、ご褒美がもらえるので、オーソドックスな展開と同じですが、プレイヤーの受ける印象は違います。

 意外性を取り入れるときは、プレイヤーに不満を抱かせないように注意しましょう。
 プレイヤーは、思惑通りに事が運ばなかった時に、不満を感じることがあります。特に、いいことがあると期待していたのに何も無かった時など、プレイヤーは落胆します。
 あまりプレイヤーの期待を裏切り過ぎないように気をつけましょう。



伏線
 伏線とは、その時点では意味を持たない情報を、後のために出しておく、シナリオ上の技法のことです。
 例えば、ゲーム序盤で謎の男が登場するが、何者なのか分からない、しかしゲーム後半でそれが明らかになる、というようなものです。
 伏線となる情報を出すことを、「伏線を張る」と言います。
 また、伏線の意味がはっきり現れること(先の例だと「後半で明らかになる」という部分)を、「伏線が表出する」と言います。


 伏線のもたらす効果は、たくさんあります。例えば、プレイヤーを引き付ける効果、物語に深みを与える効果、プレイヤーに感銘を与える効果などがあります。それらを、順番に説明します。

 ◆プレイヤーを引き付ける効果
 プレイヤーを引き付ける効果を発揮する伏線は、謎として残るタイプのものです。上記の例なら、謎の男がプレイヤーの心に残り、あの男の正体が知りたい、ストーリーの続きを知りたい、と思わせます。
 もちろん、ただ男が登場するだけでは、あまりプレイヤーの関心を引きませんから、それなりに魅力的な謎を用意しておかないといけません。このタイプの伏線を張るときは、いかにプレイヤーの興味を引く書き方をするか、よく考えましょう。

 ◆物語に深みを与える効果
 物語に深みを与える効果は、伏線の性質そのものにあります。伏線は、言わば物語の本流とは別の、もうひとつの流れだと考えることができます。
 例えば、先の例の謎の男にしても、彼には彼の人生があり、考えがあり、生活があるわけですが、主人公とは別の場所で行動しているので、それは表に出てきません。
 しかし、主人公の物語(本流)とは別に、謎の男の物語(伏流)も存在しているわけです。その伏流が、本流に少しだけ出てきて影響を与える部分が、伏線として書かれる部分です。
 伏線があると、色んな人間の行動や思惑や、そういったものが複雑に絡み合った、深みのある物語になります。そういう深みを感じさせる伏線の使い方ができるといいですね。

 ◆プレイヤーに感銘を与える効果
 プレイヤーに感銘を与える効果は、伏線が表出した時に得られます。今まで謎だったことが、クライマックスシーンなどで明らかにされ、プレイヤーが「そうだったのか!」と思う瞬間です。プレイヤーにあっと言わせたら、大成功ですね。
 


 伏線は、「伏線を張る」部分と、「伏線が表出する」部分が、分かりにくいものと、分かりやすいものがあります。
 そこで、それぞれ分かりやすい場合と分かりにくい場合の、4つの組み合わせを考えてみます。

 ◆「伏線を張る」部分も「伏線が表出する」部分も分かりやすいタイプ
 両方分かりやすいタイプですね。
 先の例の「謎の男が現れ」、「後半で正体が明らかになる」というのは、このタイプです。
 もっとも分かりやすいタイプですので、最初はこういう伏線を使っていくとよいでしょう。

 ◆「伏線を張る」部分が分かりにくく、「伏線が表出する」部分が分かりやすいタイプ
 最初に分かりにくく、表出したとき分かりやすいタイプの典型的な例は、推理ものの犯人です。多くの場合、推理ものの最大の興味は「犯人は誰か?」です。ですから、犯人が誰かは、最後まで分からないようにしておきたいのですが、かといって全くヒントを出さず、最後になって急に「この人が犯人です」と言っても、プレイヤーは納得しません。
 ある程度、プレイヤーが推理できるだけのヒントを事前に与えておくというのが、推理もののルールです。しかし、このヒントが分かりやす過ぎると、早々に犯人がバレてしまいますので、分かりにくい伏線として仕込んでおかなければなりません。例えば、事件発生直後、最初に犯人(もちろんこの時は犯人と分かっていない)と話した時に、犯人しか言わないようなことを、ポロリと言ってしまう、というようなものです。しかし、この時点では、主人公は(そして多くのプレイヤーも)このポロリに気づかないわけです。それが、最後になって明らかにされると、プレイヤーは、「ああ! そういえばあの時!」と唸るわけです。
 このタイプは、最初からはっきりしているタイプの伏線に比べて難しいので、少し慣れてから使うようにすると良いでしょう。
 
 ◆「伏線を張る」部分も「伏線が表出する」部分も分かりにくいタイプ
 最初から最後までずっと分かりにくいタイプです。これは、裏設定のようなタイプです。
 物語の根底にある深い部分の設定や、秘密にされている裏の設定などを、少し匂わせておくようなものです。
 こういうタイプの伏線は、主に物語に深みを与える効果を狙って使われると思います。うまく使えば、深みが増すでしょうが、下手をすると、ストーリーを難解にしたり、ゲームが終わっても謎が残ったままになってすっきりしないということにもなりかねないので難しいですね。
 このタイプも、少し慣れてから使うようにすると良いでしょう。

 ◆「伏線を張る」部分が分かりやすく、「伏線が表出する」部分が分かりにくいタイプ
 最初分かりやすく後で分かりにくいタイプですが、これは結構微妙です。なぜなら、伏線が失敗したとき、こういう感じになるからです。
 つまり、伏線は張ったんだけど、結局何のことか分からないまま終わってしまうので、プレイヤーは不満に思うわけですね。「結局あれは何だったの?」と思うわけです。
 こういう状態を、「伏線を回収し損ねた」というような言い方をします。
 したがって、あえてこのタイプの伏線の扱い方をする必要性がある場合以外は、このタイプは扱わないほうがいいでしょう。



セリフについて

 RPGのシナリオは、主にセリフによって表現されます。ですから、セリフを上手く書くということは、シナリオライターにとって最も重要なことのひとつです。
 ここでは、会話やセリフについて考えてみたいと思います。



セリフの果たす役割

 セリフというと、あるのが当たり前のものとして、役割など考えずに書いている人も多いと思います。それでもいいのですが、セリフがゲームの中で果たしている役割を少し考えて書けるようになると、より良いシナリオを書くことができます。
 では、セリフの果たす代表的な役割を考えてみましょう。

◆説明する
 セリフは、プレイヤーに対して状況や設定を説明する役割を果たします。
 代表的なものに、下記のようなセリフがあります。
「ここは、バリスの町です」
 よく、町の入り口の近くに居る人物が、こんなセリフをしゃべりますね。これは、その場所がバリスという町であるという設定を説明しているだけの、単純なセリフです。
 他にも、こんなのがあります。
「やあ、東の橋が通れるようになったみたいだよ」
 これは、イベントをこなした後、それまで通れなかった橋が通れるようになり、東の町へ行けるようになったという状況の説明です。

 上記の例は、非常に単純な例ですが、他にもセリフの中に含まれる説明は、たくさんあります。
 例えば、下記のような会話があったとします。
A君「ど、どうしよう?」
B君「どうしようって・・・どうするかな・・・。」
A君「お袋さんに、謝った方がいいか?」
B君「馬鹿言え! この花瓶、母ちゃんメチャクチャ大事にしてたんだぞ!? 壊したなんて知られたら、殺されちまうよ!」
A君「じゃあ、どうするんだよ?」
B君「そ、そうだ! ゲンさんとこ持ってこう!」
A君「そうか! ゲンさんなら直せるかも!」

 この会話の中で、以下のようなことを説明しています。
・花瓶を壊したという状況
・その花瓶を母親が大切にしていたという設定
・母親は怒ると怖いという設定
・ゲンさんという人物の設定
 「母親は怒ると怖い」というのは、直接説明しているわけではありませんが、そうプレイヤーに感じさせるような書き方をすることによって、間接的に説明しています。

◆心理を描く
 セリフは、キャラクターの心理状態や感情を描くのに、重要な役割を果たします。
 先の花瓶を壊した話の例だと、「ど、どうしよう?」というようなセリフは、A君の動揺と狼狽を表現しています。さらに、「馬鹿言え!───」というようなセリフは、同じくB君の動揺や興奮を表現していますし、「どうしようって・・・どうするかな・・・。」というのは、迷いですね。
 このように、セリフによって、キャラクターの心理や感情を表すことができます。

◆ストーリーを展開する
 セリフは、ストーリーを展開させる役割も果たします。
 先の花瓶を壊した話の例だと、「そ、そうだ! ゲンさんとこ持ってこう!」というようなセリフは、ストーリーを次へ進めるセリフです。
 特に、RPGの場合、プレイヤーに「次に何をするべきか」ということをある程度示しておかなければならないので、こういうセリフは、重要になります。

◆キャラクターの個性を作る
 セリフは、キャラクターの個性を表現するために、もっとも重要な役割を果たします。
 先の花瓶を壊した話の例で、A君が「お袋さんに、謝った方がいいか?」と問います。それに対するB君の反応で、B君の性格や考え方が分かります。
 例えば「そうだな・・・ちゃんと謝ろう。」と言えば、B君は真面目で誠実な性格だという印象を受けます。
 これが、「ちっ・・・しょうがねえな、謝っとくか。」だと、行動としては同じ「謝る」なんですが、だいぶ不誠実な印象を受けます。
 ちなみに、先の例の「馬鹿言え! この花瓶、母ちゃんメチャクチャ大事にしてたんだぞ!? 壊したなんて知られたら、殺されちまうよ!」だと、B君を通して、怒ると怖い母親のキャラクターも見えてきます。つまり会話を通して、その場に居ないキャラの個性も表現することが可能なのです。


 このように、セリフは色々な役割を果たします。セリフの役割を理解すれば、適切なセリフが書けるようになります。「ただ、なんとなく」ではなく、「何のためにそのセリフを書くのか」ということを意識できるようになるといいと思います。


良いセリフ

 次に、良いセリフとは何かを考えてみます。

◆的確に情報を与えるセリフ
 前の項で、セリフは説明の役割を果たすと書きました。RPGでは、プレイヤーがプレイしやすくするために、色んな形で適切に情報を与えないといけません。ですから、いかに的確に情報を出し、説明していくかということが重要です。
 かと言って、前に書いたような「バリスの町です」とか「橋が通れるようになったよ」というような単純な説明ばかりでは、セリフを読んでいて面白くないですから、会話などの中にうまく入れ込んでいかないといけません。そのあたりが、ちょっと難しいですね。

◆感情が表れているセリフ
 感情が表れているセリフは、読んでいて面白いですし、キャラの個性も出ます。
 また、キャラクターを「生きたキャラクター」「リアルなキャラクター」にするためには、プレイヤーに感情の動きを感じてもらうことが必要不可欠です。
 ですから、セリフを書くときには、キャラの感情の動きを考えながら書きましょう。

◆そのキャラにしか言えないセリフ
 キャラの個性を反映したセリフは、「そのキャラにしか言えないセリフ」であったり「そのキャラだからこそ言えたセリフ」になります。
 逆に言えば、誰にでも言えるようなセリフは、あまり良くないということですね。(と言っても、すべてのセリフが個性的である必要は無いですが)
 キャラの個性を十分に把握し、「いかにも、こいつらしい」というセリフを書けるようにがんばってみましょう。


悪いセリフ

 次に、良くないセリフとは何かを考えてみます。

◆キャラに合わないセリフ
 キャラクターには、それぞれ性格や考え方があります。ですから基本的には、その性格や考え方から出てくることしかしゃべりません。
 もし、そのキャラから出てこないはずのセリフをしゃべらせてしまうと、そのキャラクターはリアリティを失ってしまいます。キャラクターには、そのキャラに合ったセリフ、それらしいセリフをしゃべらせましょう。

 キャラに合わないセリフを書いてしまう原因は、いくつかあると思います。例えば、作者がキャラクターの性格をつかみきれていない場合です。書いている本人が、しっかりキャラを把握していなければ、らしくないセリフが出てきて当然です。

 作者が自分の言葉でセリフを書いてしまったときも、らしくないセリフになります。本来、セリフはキャラクターの言葉で書かないといけません。しかし、作者が主張したいことが強すぎると、キャラの口を借りて、作者自身が語ってしまうことがあります。そうなると、いくらキャラのセリフとして書いていても、何か違和感のある、らしくないセリフになってしまいます。

 キャラに合わないセリフを書かないようにするためには、キャラの性格をしっかり把握し、このキャラだったらこうしゃべるだろうと、キャラの気持ちになって考えることです。


◆説明的なセリフ
 前に、セリフの果たす役割のところでも触れましたが、単純な説明だけのセリフは、面白くありません。ですから、なるべく説明っぽくならないように、説明をしなければならないのです。いかにも説明、というセリフばかりでは、プレイヤーは、しらけてしまいます。
 説明的なセリフにも、色々あります。いくつか例をあげてみましょう。

 ◇本当の説明
 本当の説明というのは、説明自体が目的のセリフです。例えば、下記のようなものです。
 Aさん「ここは、何という町ですか?」
 Bさん「ここは、バリスという町です。」
 Bさんは、Aさんに説明を求められたから答えたわけですから、説明自体が目的でしゃべっているわけです。別に間違ったセリフではありませんが、面白くもありません。
 ちなみに、前に出てきた、町の入り口の近くに居る人物が、「ここは、バリスという町です。」などと言うのは、このやりとりの省略形と考えることもできます。

 しかし、こういう説明自体が目的の会話も、RPGでは、よくあります。例えば、ある町で町長さんからモンスター退治の依頼を受けるというような場合、大抵は町長さんからいきさつや現在の状況の説明を受けます。こういう場合も、町長さんの感情を交えるなどして、なるべく面白い話にするように努力したほうがいいですね。
 本当に説明だけを長々と続けられると、プレイヤーは飽きてきますし、説明の内容がだんだん頭に入らなくなってきます。

 ◇説明のために不自然になったセリフ
 これは、本来説明するシーンじゃないのに、作者が説明の入れ方を間違ったために、変に説明的になったセリフです。
 例えば、下記のような感じです。
 <これは、主人公の少年アッシュと近所のおばさんの会話です>
おばさん「あらアッシュ、どこ行ってたの? 今朝から見かけなかったけど。」
アッシュ「ちょっと、山へね。」
おばさん「あんたが居ないうちに、郵便が届いたわよ。ガジェットさんって人から。」
アッシュ「ほんと!? 手紙どこにあるの?」
おばさん「幼なじみのフィオちゃんが、預かってるわよ。」

 さて、問題は、おばさんの最後のセリフです。この場合、「幼なじみの」が余計です。なぜなら、近所のおばさんなんですから、アッシュのこともフィオのことも、よく知っているはずだからです。もちろん、アッシュもフィオをよく知っています。そういう状況で、わざわざ「幼なじみの」なんて説明は、普通しません。単に「フィオちゃんが、預かってるわよ。」と言うのが自然です。
 しかし、作者としては、フィオが何者なのかプレイヤーは知らないだろうから、説明が必要だと思い、つい余計な説明をつけてしまうわけです。
 こういう場合、不自然なセリフにならないように、言い方を変えなければなりません。
 例えば、下記のような感じです。
アッシュ「ほんと!? 手紙どこにあるの?」
おばさん「フィオちゃんが、預かってるわよ。」
アッシュ「なんで、フィオが預かるんだよ?」
おばさん「しょうがないだろ、あんたんち、郵便受けが無いんだから。」
アッシュ「だからって、なんでフィオが・・・。」
おばさん「いいじゃないか、幼なじみなんだから。兄妹みたいなもんだろ?」
アッシュ「よかないよ。今度手紙来たら、おばさん預かっといてね。」
おばさん「はい、はい・・・。」


 説明のために不自然になったセリフというのは、ある意味間違ったセリフです。別に文法が間違っているとか、事実と矛盾しているとかいうわけではないですが、物書きの基準からしたら、間違いと認識した方がいいでしょう。そう考えて、直していった方が、上達します。
 


Last Updated : 2006-10-11

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